「ゴミをアートに変える」社会派アーティストが挑む、カンボジアの子どもたちの未来を想う作品づくり

人々が「ゴミ」として捨ててしまうものに手を加え作品を生み出す「リサイクルアーティスト」のモニシロンさん。シェムリアップ州にある工房には独特な作品が数多く展示されています。一つ一つの作品に目を凝らせば、それらはペットボトルやそのふた、ストローといったプラスチック類、貝殻や魚の鱗、木の枝や葉、端切れなど、普段私たちが「ゴミ」として捨ててしまうものからできていることがわかります。

近年、ホテルやバーでの作品展示、カンボジア文化芸術省、環境省主催のアート展や在カンボジアフランス大使館主催のアート展に作品を出展するなど活躍の幅を広げています。2019年には、環境保全分野で素晴らしい貢献をしたとし、ASEAN各国や地域においてきれいで緑豊かな環境づくりを実践するASEANの若者に贈られる賞「ASEAN Youth Eco-champions Award(※)」を受賞しました。

そんなモニシロンさんに「リサイクルアート」に取り組むようになった原点と創作活動にかける思いについてお話を伺いました。

モニシロンさん(写真右)。約8千本のペットボトルを使用して作ったカンボジアの伝統弦楽器「チャパイ・ドーン・ヴェーン」の作品の前で。この作品で「第1回ASEAN Youth Eco-champions Award」を受賞した。作品を作るために使用したペットボトルはシェムリアップ州にある有名ホテルから譲り受けた。担当者によればそのホテルでは1週間に約6千本のペットボトルが捨てられているという。

絵を描くことが大好きな幼少時代

実は私は幼い頃弁護士になるという夢を持っていました。きっかけとなった出来事は、当時近くに住んでいたおばあさんが理由もわからないまま不当に逮捕されてしまったことです。弁護士になれば苦しみを受けた人、弱い立場に置かれた人を守れると思いました。

しかし家庭が貧しかったので小学校4年生の時に学校を中退せざるを得ませんでした。本当は勉強を続けたかったのですが家計を支えるためには仕方がありません。

学校を辞めてからは毎日田畑で働いたり川で魚を取ったり、両親の手伝いをしていました。ただどこに行くにも必ず持ち歩いていたものがあります。ペンとノートです。休憩時間になれば目に見えた物を何でも絵に描いているような子供でした。時々ペンを忘れてしまった時には指で地面に描いていました。それくらい、本当に絵を描くことが大好きだったのです。

両親はそれを見て、当時お寺の本堂に絵を描く仕事をしていたコンポンチャム州のいとこの元に私を預けました。プロの絵師から毎日絵を学ぶことができるのですから、本当に、本当に楽しい日々でした。

叶わない思い

ただ続けていくうちに絵の学校で学びたいとも思うようになりました。お寺では仏教に関する絵は学ぶことができますが、いとこの見よう見まねで学ぶものです。学校に行って絵を描く上で基礎となる知識や技術を身に付けたいと思ったのです。

プノンペンに芸術学校があることを知り両親にそこで学びたいと強くお願いしたのですが、家計の問題で残念ながら許してもらえませんでした。それでもどうしても学校で学びたかったので、自分でなんとかお金を用意しようと市場で自分の絵を売ることにしました。片道50キロある市場への道をほぼ毎日自転車で通い、これを6ヶ月間続けました。でも結局入学に必要なお金を捻出することはできませんでした。

これまで通りいとこの元で絵を学びながら働いていたある年の正月、シェムリアップ州の両親の元に一時帰郷をしていた時に不運に見舞われてしまいます。母のサトウキビジュースを売る仕事を手伝っていた時のことです。サトウキビをローラーのついた機械で絞っていたのですがうっかりそのローラーのなかに中指を巻き込んでしまい、そのまま失ってしまいました。このことが原因で、私はお寺のお堂で絵を描く仕事を失ってしまったのです。この時は本当に落ち込みました。

ゴミをアートに変える

指の治療には一年かかりましたが、その後障がい者と孤児の支援をするKILT(Khmer Independent Life Team)というNGOに出会うことができました。ここではたくさんのことを学びました。使われなくなったタイヤを用いて財布を作ったり、天然石を用いてネックレスやブレスレットを作ったり、古紙から再生紙を作ったり。新しい技術の習得を楽しみながら日々商品作りに励みました。

そんなある日私の人生を変える2つの出来事を経験します。1つは庭先で私の親戚がごみを燃やしていた時に発生した煙で気持ちが悪くなったことです。ゴミを燃やすと自然環境にも人体にも悪い影響を与えることを身をもって実感しました。

もう1つは自転車で道路を走っていた時のことです。まだ発売されたばかりの新車が自分のすぐ横を通り過ぎ、運転手が車の窓から捨てた空のペットボトルが私の頭に当たりそうになりました。とても違和感を覚えましたし腹がたちました。「時代の最先端を行くような人でもこんなにもマナーがなっていないのか」と。また同時に、「こうやって所構わずゴミを捨てる人がいるから自然環境が破壊されてしまうのだ」と。

このような行動をする人達に対してゴミが環境に与える影響について伝えたいと思ったものの、自分は誰かに対して行動を変えるよう教えたり説得する立場では無いと思いました。

その時自分が取り組んでいるNGOでの活動が思い出されました。私が生み出す商品は古くなったタイヤや古紙を利用したものです。使われなくなってそのまま放っておけば価値がないこれらのものも、手を加えれば商品として売ることができる。ここから着想を得て人々がゴミとして捨ててしまうようなものでも自分が大好きな芸術という形を通してなら人々のゴミに対する見方や考え方を変えることができるのではないか。タイヤの財布や石のブレスレット、再生紙が今自分が何をするべきなのか教えてくれました。

その日から17時にNGOの仕事が終わり帰宅するとゴミを使った作品作りに没頭しました。毎日夜遅くまで、遅い時は深夜2時や3時まで時間を忘れて取り組んだので妻に怒られてしまったこともありました。それでも時間が足りなくて、もっと作品作りに時間をかけるためにNGOの仕事を辞めました。

インタビュー中、「水瓶を頭に乗せて運ぶ女性の絵」を映した写真を見せてくれた。魚の鱗や瓶の破片、葉などを使用して作られたこの作品の実物は、プノンペンで開催された美術展に出展した際パリから来たゲストが購入した。今でもこの作品が手元にないことを悲しんでしまうほど、本当にお気に入りの作品なのだという。

家族や自分自身、社会のためになるのであればやり通す

日々一生懸命作品作りを続けていたのですが、一度この創作活動を投げ出したことがあります。NGOを辞めてから作品作りから得られる収入だけに頼って生活をしましたが、そこから得られるわずかな収入だけでは家族を十分に養うことができませんでした。一度創作活動を辞め、まずは食べるために農業に従事しました。しかしいくら頑張っても十分な生計は立てられません。何をやってもうまくいかず、もうどうしていいかわからなくなっていました。ある時何もせずにフラフラとしていた私を見かねた父親に言われた言葉があります。「なんでもいいからやったらいい。それが家族や自分自身、社会のためになることであれば。」この言葉を聞いた時、「やっぱり自分は作品が作りたい。それによってゴミによる環境汚染を減らしたい。」と改めて思いました。

全ては子どもたちのために 環境のために

その後作品作りを再開し継続した結果、KHMER TIMESやNicetv Cambodiaなど国内メディアに多数取り上げてもらったりカンボジア芸術省が主催するイベントに招待してもらうようになるなど、私のことを認知し応援してくれる人も少しずつ増えてきました。とはいえ十分な収入を得られている訳ではなく生活はなかなか安定しません。それでも作品作りを続けていることに対して私は日々自分自身に問いかけることがあります。「この活動は誰のためなのか、そして何のためなのか」と。私なりの答えは「この活動は自分のためだけにやっているのではない、子どもたちの未来のためにやっている」ということです。例えばゴミをポイ捨てする人はその行為をそんなに大きな問題として捉えておらず、増してそれが環境汚染に繋がるなんて思いません。でもプラスチックゴミはそのまま放っておいても自然には還りませんから、このような行為を積み重ねることによって環境汚染を引き起こし、子どもたちが将来背負わなければならない負の遺産をつくってしまいます。

私は、人々が自分の作品を見る事によって普段「価値がない」と捨ててしまう「ゴミ」は、ゴミである前に価値ある何かを生み出せる「モノ」であることに気がついてほしいです。そうしたら捨てるモノの量、つまりゴミの量を減らすことが出来ると思います。ここに私が活動を続ける理由があるのです。

子どもたちへの環境教育にも関心があります。子どもたちには、ポイ捨てすることやゴミを放っておくことの自然環境に対する影響について伝えた上で、ゴミとして捨てられてしまうモノは芸術作品として価値あるものに蘇らせることができるのだと作品を通じて伝えたいのです。さらにこれは大きな夢になりますが、リサイクルアートの美術館を作りたいのです。その美術館では実際にリサイクルアートを制作できる場所、その作品を飾る場所を設けたいと考えています。これからもたくさんの作品を作り続け人々にモノとの関わり方、ゴミとの関わり方を考えるきっかけをつくっていきたいです。

シェムリアップ州にあるゴミ集積場で働く子どもたちと一緒に作り上げた作品。サトウキビの皮やプラスチックの袋、古紙や端切れを使用して作った作品には「両親の我が子に対する愛情」を表現した。材料の一部はここで子どもたちと一緒に探し、きれいに洗って使用した。子どもたちには、自分たちがゴミとして捨ててしまうものからアート作品を生み出すことができるということ、遊び道具だってここから作ることができるということを伝えた。
※「ASEAN Youth Eco-champions Award」について(https://environment.asean.org/asean-eco-schools-award-and-ayeca/)

 

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